1/9 - 「他人のことを思う」という能力

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

 

数年前に、この本を初めて書店の面出しコーナーで見かけた時には、筆者の名前とタイトル、そして"今どき"のアニメのような装丁から、失礼ながら「どこかの人気ブロガーの日記みたいなもんやろうもん」と思っていたのですが、

 

目に入った書店のPOPの紹介文には、著者のブレイディみかこさんが僕も良く知る福岡で一番の公立進学校(修猷館。僕と妻の出会った大学のすぐとなりだったのです。こうして見ると名前からしてかっこいいですね。「香椎高校」とはなんかだいぶ差がある…)を出て、UKパンクが好きすぎて英国に移住したという経歴。

 

僕の持つその進学校のイメージとUKパンクのギャップに、むむ? と興味がわきました。

 

そして宣伝POPには著名人の推薦文が。

名前を見れば推す人はどうも「ホンモノ」ばかり。特に目を惹いたのは中川李枝子さんの名前でした。

 

中川さんは僕らの世代なら「ぐりとぐら」を知らない人はいないでしょう。姉妹でその作品を手掛け、また宮崎駿氏の言わずと知れた名作「となりのトトロ」の象徴的な位置にあるともともいえる主題歌「さんぽ」の作詞をした方です。歩こーう歩こーう、です。その他にも、小学生の国語で習った「くじらぐも」とか。

 

中川さんのように時代をしっかり俯瞰でみることができる人(と僕が思っている)が推しているなら…、と書店に隣接されたコーヒーショップで読んでみました。(買わんのかい)

 

……が、一章めから一発でやられました。おもしれい。

おもしろい、という評価が適切かは分かりませんが、僕の息子と同じ年代(中学に入学するところから始まる)の息子くんとの筆者ブレイディさんの日々の生活で直面する英国、ひいては人間社会全体に通じる種々の「人間的な」問題を、生活に密着した圧倒的な「リアル」と、一貫した知性とユーモアと、そして大きな思いやりとで書いてあり、とても興味をひかれて、いっぺんに作品にひきこまれました。

それらをブレイディさんの根底に流れている音楽を聴きながら読むようで、ぼくのとてもがんこでせまい読書範囲の壁を、あっさりとズガンと拡げてくれたような気がしました。

 

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先日息子と本屋をうろついていたら、この本が文庫になっていたのを見かけましたので、いい機会と思って単行本の「2」(続編)とあわせて購入しました。

作中でも重要な意味を持つワードになる「エンパシー(Empathy)」が豊かなブレイディさんの息子くん。

エンパシーとは、日本では聞き馴染みのない言葉ですが、日本語にすれば「他人の気持ちになって考えることのできる能力」となるでしょうか。(作中では「他人の靴を履くこと」という英語圏の言い回しが使用されています)

 

 ついでに書くと、作中のブレイディさんの息子くんと同世代のうちの息子は、エンパシーとは対極にあるような自閉症スペクトラムの子でして、客観性というものをほとんど持ち合わせていません。出産時のダメージで知的にも身体的も少なくない障がいを持っています。

息子とは逆に、去年(2022年)他界した僕の妻はエンパシーがとても強い人でした。(この本を読む前からエンパシーという言葉は夫婦共に知っていました)

 

それだけに、その両者の性質の違いと、それぞれが持つよろこび、そして反対につらさなども、自分はよく理解しているつもりなのでそういうことにも思いが至り、読みごたえがありました。

 

ちなみに息子は自分に似たのだと思います。つまり僕は他人の対場になるという意識や感覚がとても限定的でせまいです。

 

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このお店(SPOONのこと)をやっていて、とてもよく感じるのは『自分と似たような感性の方たちがSPOONに興味をもってくださっている』ということです。

そりゃそうかあ! とも思います。フェンダーギブソンじゃなくて、ブランド品とは真逆のようなポジションのギターの店のホームページを読んでくださっているんだもんなあ、と。

本当にありがたいし、うれしいです。

きっとそんな人たちには、この本も楽しんでいただけるのではないかと思って書きました。

 

100万部売れたそうなので、もう読んでらっしゃる方も多くいるかもしれませんが…。

 

でも、ブレイディさんの文章は露骨に「頑張れよ!」っていう文章じゃないのに、僕のなかなか湧かないエネルギーの源泉をうまくくすぐって「がんばるぞー」ていう気持ちを噴出させてくれる、僕にとってとても"エンパワーメント"な本です。

 

いや、でも「書くこと」に興味がある自分としては、この「音楽と知性とユーモアの融合」みたいなのは、完全に目指すべきところでして、故中島らも氏にも感じていた「こんな"文章書き"がいーなー」という感じをもった書き手でした。同郷だしファンレター書きたいくらい、もうほんとに。西新(「にしじん」。自分の通った大学の所在する地名)仲間だし。

 

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今日の一曲は"Sandi Thom"の「I Wish I Was A Punk Rocker」です。

 

 

自分はピストルズもスミスも全くといいほど聞いておらず、イギリスのパンクロックといって思い出すのはこの曲なのでした。

いいですね、この「ヒアリングして歌詞(タイトル)が少し理解できる感じ」。

 

歌がうまい!

 

このサンディさんは、カバーアルバムも出していて、エアロスミスとかフーファイターズとかもアコースティックにカバーしています。フーファイは「Times Like These」を選曲。うーん、アコースティックでこの曲選ぶって、すごいなあ。

 

ゴスペルが土台にあるということで納得の歌唱力。Wikipedia見てみたら「この記事には出典がまったくありません」とか書いてあってわらいました。

 

サンディトムのこと調べてたら、ぐうぜんひっかかった検索結果の一つに日本人の女性の同曲カバーがありました。ええ、これうまいなあ。日本人かあ、すごいなあ。うむ、もう少し「ソウル」がほしいかなあ。

 

ぜんぜんこの人のこと知りもしないのですが上手だな! と思ったので載せてしまいました。

 

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今日もホームページに来て、この記事を読んでくれてありがとうございます!

 

 

SPOON

今村